2013年08月07日
3年ぶりの掲載で何を載せようかと思ったのですが、今年の税法改正がよろしいかと思い
「教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置」にしましたので、少し抜粋した箇所も
あると思いますが、ご説明いたします。
もともと扶養義務者相互間(配偶者・直系血族及び兄弟姉妹)において、生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものは、贈与税は非課税としています。(相続税法21条の3第1項2号)
今改正で新たに設けられたのは、直系尊属が子や孫や、ひ孫などへ教育資金用等として前渡しで
一括して贈与した場合にも一定の要件の下、贈与税を課さないこととしました。
<要件>
贈与(預け入れ)期間 平成25年4月1日〜平成27年12月31日
贈与する者 贈与を受ける者の直系尊属(父母・祖父母等)
贈与を受ける者 30歳未満の子、孫、ひ孫等
非課税限度額 贈与を受ける者一人につき1,500万円まで。
そのうち、学校以外の者に支払われるもの(塾・習い事等)は500万円まで。
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<教育資金口座の開設等>
預け入れ方法 金融機関(普通銀行・信託銀行・証券会社など)のうち1箇所で信託等
※手続き・・・教育資金非課税申告書を提出→金融機関での手続き
(金融機関経由で所轄税務署に提出しますので、ご本人の税務署への手続きは不要)
↓
<教育資金口座からの払い出し及び教育資金の支払い>
贈与を受ける者が30歳に達するまで。
贈与を受けた者は、払い出した金銭等を教育資金の支払いに充てたことを証する書類(領収書など)を支払年月日の属する年の翌年3月15日までに、金融機関に提出しなければならず(過ぎた場合は、この制度の対象にならないので注意が必要です)金融機関は、提出された書類により払い出された
金銭が教育資金に充当されたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、書類及び記録を贈与を受けた者が30歳に達した日の翌年3月15日後6年を経過するまで保存義務があります。
(こちらも領収書などの書類を期限までに提出していればご本人の税務署への手続きは不要)
※参考「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について」
(文部科学省)
↓
<教育資金口座に係る契約の終了>
@贈与を受けた者が30歳に達したとき
銀行等との管理契約が完了し、一括贈与を受けた金額から教育支出額を差し引いた残額があれば
30歳到達時年分の贈与として課税。
※教育資金以外の目的で払い出した場合
一括贈与を受けた金額の「残額」とみなされ、30歳到達時年分の贈与税の課税対象となります。
※契約の終了時点で残額がある場合
その年において他に贈与を受けた金額とあわせて贈与税の基礎控除を超える場合などは
所轄税務署に贈与を受けたご本人自身の贈与税の申告が必要。
A贈与を受けた者が30歳になる前に死亡したとき
残額があっても贈与税は非課税。
B教育資金管理契約に係る信託財産がゼロとなった場合
教育資金管理契約に係る預金等の額がゼロとなった場合において、贈与を受けた者と金融機関との間でこれらの教育資金管理契約を終了させる合意があった日に同契約は終了するものとしています。
※贈与者が死亡た場合
相続開始前3年以内の一括贈与でも相続税の計算への持ち戻しはありません。
この制度のメリットとしては
○将来、相続税の支払いが予想される人にとっては
非課税で相続財産を生前に減少させることが可能。
○孫・ひ孫等に贈与した場合は相続財産が一世代飛ばしてできること。
○遺産分割のトラブル防止として祖父母など贈与する者が自分のお金を
自分の意思で贈与できること。
この制度のデメリットとしては
○特に相続税を支払わなくてもいい人は、現在も「その都度必要と認められる分を支払う場合
贈与税は非課税」なので、あえてこの制度を利用するメリットは少ない可能性があること。
○教育資金の領収書等を金融機関に忘れずに提出する手間等があり、また30歳に達した時に
残額に対して贈与税がかかることから資金管理も必要となること。
○運用可能な資金が長期にわたって拘束されること。
○金融機関に対する信託管理手数料がかかる場合があること。
上記のようなそれぞれメリット、デメリットがあり、この制度を利用するかどうかよく検討する必要が
あると思われます。
相続税の改正により、今後基礎控除(5,000万円→3、000万円)や法定相続人比例控除
(1,000万円/1人→600万円/1人)の引き下げなど相続税が発生する割合が増加する中で
相続税対策のひとつとして有効ですが、その反面、30歳に達した時に残額があると贈与税が発生
するリスクの可能性も考慮し、かつ贈与する者が老後資金等を充分にご準備されていることを
踏まえた上で、判断されるのがよろしいかと思います。
当事務所としましては、この制度の活用にあたり様々な角度から十分に検討し、お客様にとって
この制度を利用するメリットがあるか総合的に判断してアドバイスできればと思っております。
上野 真章