先日、不動産売買/仲介業の方から消費税率改正により事業用テナントに係る
消費税率の取扱いに関しての問合せがありました。


平成25年9月30日以前に契約した事業用建物の賃貸で『消費税率の改定があった場合
は改定後の税率による』旨の定めがある場合は平成26年4月分から消費税率は8%に
変更になるのかという内容でした。


私は平成9年の消費税率改正も経験しましたが、経過措置に関して当時気を付けて
いたのは、建設業取引やリース契約が中心だったような記憶がありますが、事業用
テナントの経過措置に関しては、あまり印象に残っていないのが正直なところです。


一般的に周知されているであろう税率改正による経過措置は建築請負工事に関して
の契約で平成25年9月30日までに締結されれば、引渡しが平成26年4月以降であっても
旧税率5%が適用されることが代表的なものなのでしょうが、テナント等の事業用建物の
家賃に係る消費税にも経過措置が設けられております。


経過措置を適用する条件として平成25年9月30日までに賃貸借契約締結し、平成26年
3月31日までに貸付けを開始した場合には、契約期間内については、平成26年4月1日
以降の賃料は旧税率が適用となりますが、下記の要件の『@及びA』又は『@及びB』
満たす必要があります。


@貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること。
A事業者(貸付側)が事情の変更とその他の理由により金額の変更を求めることができ
 る旨の定めがないこと。
B契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申し入れをすることができる
 旨の定めがないこと並びに当該貸付に係る資産の取得に要した費用の額及び付随費
 用の額のうちに当該契約期間中に支払われる当該資産の貸付の対価の額の合計額の
 占める割合が100分の90以上であるように当該契約において定められていること。
 

@は契約期間や賃貸料の金額などが定められていること。Aは賃貸料が経済事情の
変動、公租公課の増額などの事情により賃貸料の変更ができることの定めがないこと。
Bはファイナンスリース取引で私自身、目にした事はありません。


一般的な契約書は@はほとんど定められていることが多くAに関しても諸事情による
賃料変更が定められていることが多いと思われ、@には該当するが、Aには該当しない
ということになり、経過措置の適用は受けられない結果となります。


『消費税率の改定があった場合は改定後の税率による』という定めはAの金額変更を
求めることができる旨の定めに該当しないものとして取り扱われ、『…改定後の税率
による』という定めがあったとしても、『@及びA』又は『@及びB』の要件を満たす
ようだと旧税率5%が適用となります。


『…改定後の税率による』という定めがある賃貸契約での平成26年4月以降の税率は
下記の通りとなります。


◎消費税率8%適用の場合
・契約期間・賃料金額設定がある。
・諸事情による賃料変更の定めがある。


◎消費税率5%適用の場合
・契約期間・賃料金額設定がある。
・諸事情による賃料変更の定めがない。


また、不動産賃貸は前家賃が多いと思いますが新税率適用が平成26年4月分家賃から
なのか、平成26年5月分からなのか会計処理の方法により異なってくるので注意が
必要です。


改めて今回の経過措置を確認してみると、簡単な様で結構判りにくいので適切な処理を
行うには契約内容を良く確認しなければなりません。


国税庁消費税室の『平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率
等に関する経過措置の取扱いQ&A』
で幾つかの事例が例示されていますのでご参考に。



菅原 裕之