特定支出控除とはサラリーマンやOLのような給与所得者でも仕事に必要だと認められる経費
(特定の支出)が一定額を超えた場合、その分を所得から控除できる制度です。
これまで特定の支出として認められる範囲は狭く適用要件も厳しかった為
あまり一般の人には、なじみのない制度でしたが、平成25年の改正によって
それらが緩和された為、多くの人が利用できる可能性がでてきました。


給与所得者が次の@からEの特定支出をした場合、その年の特定支出の額の合計額が
下記の表の区分に応じそれぞれ「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を
超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から
差し引くことができる制度です。


その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合、特定支出控除額は
その年中の給与所得控除額×1/2となります。
その年中の給与等の収入金額が1,500万円超の場合、特定支出控除額は125万円となります。


特定の支出として認められるのは以下のもので、且つ給与支払者(会社)の証明があったものと
なります。
@ 通勤費
一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
A 転居費
 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
B 研修費
職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
(研修受講のための交通費含む)
C 資格取得費
職務に直接必要な資格を取得するための支出
D 帰宅旅費
転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とすることとなった場合等に
おいて、勤務する場所と配偶者が居住する場所等との間の旅行に要する支出
E 勤務必要経費(上限65万円)
○図書費
書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用
○衣服費
制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用   
○交際費等
交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出


※会社等から特定支出を補てんする手当等があり、その金額について所得税が
課せられない部分については、この算出から除かれます。
逆に、給与明細書等に当該手当等が記載されていても
給与所得として課税の対象となっている場合は、特定支出の額に含めて
計算することができます。
また、支出した金額のうち翌年以降に実質的に提供を受けるものについては
当年ではなく翌年以降の特定支出として計算することになります。

例えば、年収400万円のサラリーマンの場合
給与所得控除額は134万円になります。
これの半分、つまり年間で特定の支出が67万円を超えれば特定支出控除が使えると
いうことです。(134万円÷2=67万円)
年間に特定の支出が90万円ある人であれば、23万円の特定支出控除が受けられます。
(90万円−67万円=23万円)
結果、所得税の税率が10%だったすると、住民税の税率10%を含め、所得税及び住民税合計で
4万6千円が軽減されます。


◎手続きとしまして
特定支出控除を受けるためには確定申告をする必要があります。 確定申告の際
添付する書類は以下のものです


○給与所得の源泉徴収票
○給与所得者の特定支出に関する明細書
○給与支払者の証明書
○搭乗・乗車・乗船に関する証明書や領収書など支払った金額を証明する書類



今回の改正で特定支出の範囲が拡がり、適用判定基準も引き下げられましたが
一般の企業であれば、通勤費や制服代、職務に必要な書籍代、研修代など
会社が負担するものと考えられますので、医療費控除のように一般的に利用されるところまでは
至らない気がします。
また、支出した後の証明書を会社からもらわなければ控除が受けられませんので
事務手続きの煩雑さも伴います。
しかし、「資格取得で多額の費用を払う人」、「単身赴任で帰省するときの旅費が多額の
人」は、会社側も証明書を発行しやすく、特定支出控除額も大きくなるため、この制度の利用が
増加するのではと思います。


上記手続きは確定申告になりますので、手続きや作成などお困りの方は
お気軽にご相談下さい。



上野