個人確定申告が終わったのもの束の間、4月から6月にかけて法人決算業務に追われ、思うように仕事が進まない今日この頃でございます。


その中で5月下旬に当事務所で長年関与させて頂いてます個人のお客様に税務調査がありました。推測ですが調査理由は過去数年に渡り土地売却による譲渡所得があり金額が高額で内容が複雑だった事と調査対象年内に離婚による財産分与があり、それに伴う課税関係の確認という事だったみたいです。


財産分与に関する事実関係が解っていれば、課税関係は実務に携わる者としては受取側と支払側の双方の場合を想定し最良策を助言する必要があります。


しかし繊細な問題のため納税者が民法上の問題を重視し税法上の問題を税の専門家へ事前に相談していない事が多々あるのが現実ではないかと思います。


財産分与があった場合、どのような課税関係が生じるかというと、概ね下記の通りとなります。


<財産を貰った側>


金銭の場合は原則として税金は係りません。但し、事情を考慮しても財産分与額が過大である場合(判定はかなり困難)と離婚が課税逃れの為と認められる場合などは贈与税の対象となります。
 

不動産の場合は不動産取得税や不動産登記の際の登録免許税が課税となります。


<財産をあげた側>


金銭の場合は課税の問題は生じませんが、不動産や株式などの場合は課税問題が発生します。


財産をあげた側に税金が係るのはおかしい気がしますが、最高裁判決で次の通りの旨判事されています。


「財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによって、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。」としていて、この経済的利益の享受が譲渡所得とされるみたいです。


不動産・株式を分与した場合、財産分与時の時価で譲渡したことになり譲渡所得として課税対象となります。勿論、当該資産に係る取得費の控除・一定の要件を満たしていれば居住用財産の特別控除等の適用はされますが、譲渡益に課される税金は高額になることがあります。


想定外の税金が発生し後で困らないように財産分与は慎重に検討する必要と会計事務所等へ事前に相談することをお勧めします。

 
菅原裕之